「事業再構築補助金」1次公募分の採択結果が6月16日と18日の2回に分けて発表されました。その後、いろいろな機関が採択結果の分析をしていますので、今後申請をしようと検討されている方の参考としてまとめました。
全体として22,231件の応募があり、このうち申請要件を満たした件数が19,239件でした。そして採択された件数が8,016件で、採択率は36.1%でした。
今回の特徴としては、要件を満たさないまま申請をしたものが2,992件と13.5%もあったことです。
公募要領や中小企業庁が制定した事業再構築指針をくり返し読んでも難解なところがあり、要件解釈が難しくなっていたことが原因と考えられます。
せっかく事業再構築にふさわしい内容であっても、要件を間違って解釈したり、書類不備等により採択されなかったものが多いということです。
この面から言っても、 認定支援支援機関のアドバイスが重要であることが分かります。
■中小企業庁のコメント
中小企業庁の経営支援部長による採択結果の総括がインターネットで公表されています。
その要点は次の通りでした。
・第一にマーケティングの面の検討が不十分であった。
この事業を実施すれば何故売上が増えるのかの根拠が不明確である。
・設備投資して製品をつくり、販売してみなければ市場はわからないという判断になりがちだが、姿勢としてはもうちょっと貪欲に調べてみる必要がある。たぶんそれは(認定支援機関だった)銀行さんもできなかったということだろうと思う。伴走した専門家も手が付けられなかったということだから、個々の企業の課題というよりも、マーケティングのためのデータをとる、何を見れば良いのか身の回りをよく見る必要がある。
・顧客規模の想定の積算根拠が甘い。なぜそれだけのお客さんが取れるんですか?というところについては、厳しく見ると8割が落第しそうな勢いである。つまり、マーケティング計画の試算が甘いということである。どれだけの客数が取れるのか、収支計画などの中で試算をするかと思うが、その根拠をしっかりと説明できていない計画が多かったということになる。
逆に言うと、このあたりをしっかり説明できれば、説得力のある事業計画になる。
・飲食関連でも多様な採択事業があった。特に「テイクアウト」という言葉が含まれる事業は約80件あった。具体的には、ドライブスルーを用いた郊外型非対面テイクアウト販売や、非接触型店舗の構築などである。
・自社の強み弱みを具体的に認識し、市場をよく調べなければならない。
・金融機関が支援したものに、20%もの法外な成功報酬を要求しているものがあったが、これはいかがなものか。
■他の機関が調べた採択結果のデータ
採択件数ベースでの業種別内訳はつぎのとおりでした。
製造業31.3%
宿泊業・飲食サービス業21.8%
卸売業・小売業12.4%
建設業6.7%
生活関関連サービス・娯楽業6.1%
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申請をサポートした認定支援支援機関として多かったのは、応募件数順で、
地銀3,903件、信用金庫3,295件、税理士3,163件、税理士法人2,508件、商工会議所2,088件、民間コンサルティング会社2,079件、商工会1,437件、中小企業診断士1,195件、公認会計士719件…と続いています。
これに対し、採択率が高かった順は、
公益財団法人56.0%、中小企業診断士43.1%、民間コンサルティング会社42.1%、地銀41.1%、信用金庫39.4%、・・・と続いています。ちなみに、商工会が36.6%、商工会議所34.7%、税理士法人29.0%、税理士25.8%でした。
公益財団法人とは、都道府県や市町村がもつ中小企業支援センターのことを指します。神奈川県の場合は神奈川産業振興センターです。しかし全体として公益財団法人の支援件数はかなり少ないです。
■弊社からのコメント
まず、申請要件を満たさなかったものが10%以上もあった理由ですが、
次のようなことが考えられます。
・事業再構築の区分が新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換および事業再編の5つあるが、それを間違って申請した。
・新しい事業の5年後の売上比率を規定しているものがあるが、その数値を示さなかった。
・売上高減少要件に必要な月別売上高を証明する書類に不備があった。
・経済産業省ミラサポplusからの事業財務情報が添付されていなかった。
次に事業計画書の内容で落とされたものとしては、次のようなものが考えられます。
・マーケティング面での検討が不十分であった。
中小企業庁の経営支援部長のコメントにもあったように、何故売上が増えるのかなどの根拠が不明確であった。
・費用対効果の根拠が示されていない。
投資額が大きすぎて、売上・利益向上による回収が定量的に示されていないなど。
・SWOT分析において、自社の分析はできているが、顧客分析・ニーズ分析や競合分析ができていない。
・公募要領に示されている「事業計画作成における注意事項」に従って事業計画書が作成されていない。
例えば、「どのように他者、既存事業と差別化し競争力強化が実現するかについての具体的な記述」、「想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等」
・限られた時間での書類審査において、審査員に納得してもらえなかった。
難しい書き方をして、審査員にストレスを与えたなど。
■次回応募する場合の注意
次回(第3回目)の応募締切りはまだ発表されていませんが9月上旬ごろの見込みです。
申請を予定されている方は早めに準備するようお勧めします。
第1回目の締切は4月30日の予定でしたが、事務局のサーバーがパンクして5月7日に変更されました。第2回目は予定通り7月2日に締切られましたが、2日前の6月30日には申請が重なって、一時システムがダウンしました。